機械などで分析した物理的な音では違う音だけれど、特定の言語の中では同じ音と認識される音があります。
その同じ音と認識される音のグループで、中心的な音を想定して、それと少し違うけれど母語話者の感覚では同じ音のグループに所属すると認識される音を、「異音」と呼びます。
細かく分けるときりがないくらい異音は存在します。説明では、典型的な例として、前後の音など、特定の条件の時にこんな音になりやすい、という「条件異音」を紹介します。
ここでは「ん」を例として、異音の説明をします。
*母語話者向けの説明です。
まず、「かばん」と言ってみてください。最後の「ん」の時、唇は閉じていたでしょうか、開いていたでしょうか。
開いた状態で「ん」と発音する人が多いことが知られています。
数字の3,「さん」と言ったときはどうでしょうか?唇は開いていましたよね。
参加(さんか)と言ったときの「ん」の音、この時の「ん」も、唇は開いています。
つぎに、唇を閉じる「ん」の例です。
「ん」の後ろに「ぷ」や「ぶ」など、唇を閉じて発音する音が続く場合、「ん」は唇を閉じて発音されます。
「三匹(さんびき)」の「ん」
「三杯(さんばい)」の「ん」
「散歩(さんぽ)」の「ん」
「ん」の発音をするときに唇を閉じますね。
★もう少し詳しく
異音は、同じ音と認識されるけれど物理的には違う音です。(音素という言葉も☐)
実際には、物理的な同じ音を出すことは非常に困難ですが、特に大きく音を作るときの口の動きが違うものを異音と言います。
そして、音の並びなど条件によって決まっているもの(特定の傾向があるもの)を条件異音と言います。
「ん」の条件異音
「ん」の後ろの音の影響受けます。
撥音「ン」がどのように発音されるかは、
後続音が「閉鎖」のある①~④の音(鼻音、破裂音、破擦音、弾き音)の場合は鼻音
後続音が「閉鎖」の無い⑥の音(母音、半母音、摩擦音)の場合は鼻母音
その他の分類(後続の音ごとの分類)
「ん」の後ろが パ行、バ行、マ行[p][b][m](両唇音)
「ん」の後ろが タテト、ダデド、ツ、ズ(ヅ)、ナヌネノ、ラ行[t][d][ts][dz][n][ɾ](歯茎音)
「ん」の後ろが チ、ジ(ヂ)、ニ [tɕ][dʑ][ɲ](歯茎硬口蓋音)
「ん」の後ろがカ行、ガ行、カ°行 [k][g][ŋ](軟口蓋音)
「ん」が最後の音 なし(語末)
「ん」の後ろが母音や半母音
アイウエオ [a][i][ɯ][e][o](母音)
ヤ行、ワ [j][ɰ](半母音)
(サ行とハ行)フ、サスセソ、シ、ヒ、ハヘホ [ɸ][s][ɕ][ç][h](摩擦音)